2012/08/24

20120823-27_北鎌~西穂ハイク(2日目:間ノ沢出合~独標の先)

今日が核心であるということは百も承知だったのに、朝っぱらから若干出遅れる。
普段ならそれほど問題にもならない程度の遅れだったが、ここで照りつける太陽のレベルはその辺の山とは訳が違う。北鎌のコルまでの強烈な登りに、強烈な陽の光が加わり、またも熱中症気味に。

■8月24日(金)晴れ(16時過ぎより2時間ほど雷雨)
5:40 間ノ沢出合
↓ - 0:30
6:10 北鎌沢出合
↓ - 0:45(水汲み時間+トイレ=15分程を含む)
6:55 左俣出合
↓ - 2:50
9:45 北鎌のコル
↓ - 5:00(ガスのため独標ピークは踏まず)
14:45 独標の先の幕営適地
北鎌尾根
赤線は正しいとは限らないが、ヤマレコで拾った誰かさんのGPSログデータと
紙資料から拾った詳細を合体させて作成した自分ら用資料。
ピークの位置はイマイチよくわからずなので、この資料も正しいのかどうか不明。
(因みに歩いてみてもどこが何番目のピークなのかどこもよくわからなかった)
水線は今回それほど重要でもなかったのでかなり適当。
5時に出発しようとしたものの大分遅くなってしまった・・・
歩きづらいゴーロに作られた幾つかのケルンを見つけながら少し進むと、昨日の幕営地に予定していた北鎌沢出合と思われる場所に到着する。

人から聞いた前情報に拠ると「北鎌のコルはウンコ臭いので、右俣の水は止めた方が良い」とのことだった。つまり右俣と左俣が合流した後の北鎌沢出合の水も自動的に「止めた方が良い」ということになる。
北鎌沢出合から左俣右俣の出合までは少し登らなくてはならないので、水を汲みに上がって再び幕営地まで降りてくるのも鬱陶しい。結局当初の予定を覆して間ノ沢出合で幕営したのは正解だったようだ。
天井沢を下り左側を見上げると北鎌沢。大きなケルンや布、太い木の枝などが立ててあるので分かりやすかったが、
沢の右側(左岸)にルートサインのテープもあり、ほんのり踏み跡もあるが藪漕ぎ必至の鬱蒼としたルートだった。
テープがあったルートは冬期のルートなのだろうか?とりあえず沢筋を進むのが正解のよう。
既に稜線には日差しが降り注いでいる。
日陰と日向の境目がこちらへ迫ってくる前に、地獄の登りを終えられればよかったのだが・・・
ヌルヌルと30分程登り、そろそろ出合があってもおかしくない頃だなと思いふと右側に目をやると、低木と藪の向こう側にもう1本沢筋が見えた。ここか?と思って少し下を見ると、ケルンも鎮座している。
水量も左俣の方が多いため間違い易いとか。しかもこの日、右俣はこの地点で既に涸れていた。因みに左俣を詰めた上部は相当ハードらしい。滑落死多数。「北鎌沢 左俣」でググるよしw
ケルンあり。ここから右俣の遡行になるので左俣から水を汲む。
写真ではわかりづらいが左俣はまだ水が流れている。右俣は涸れている。
(少し登るとまた水が出ているのだが)
元々は尾根上で幕営する予定はなく、槍の肩の小屋か南岳のいずれかで幕営するつもりでいたのだが出発が遅れて暑くなり、歩くスピードが落ちてきたため、おそらく尾根上で一泊することになるだろうと予測。但し幕営地は極めて穂先に近い場所で、明日槍の肩の小屋に着くまでせいぜい3時間程度で済むだろうと見越して水は1人2.5Lとした。
しかし登っている内に想像以上に水分を摂取してしまう。やむを得ず右俣で更に700ml程度ずつ汲んだ。

結論から言うと、案の定尾根上での幕営となり、翌日の行動中の水分も含めてこれでほぼピッタリだった。肩の小屋に着いた頃、ほんのマグカップ1杯分ずつくらいしか残っていなかったので。
あのコルを目指す。
ところどころ枝沢があるので間違って迷い込まないよう、まっすぐコルに向かっている沢を上がっていく。
マスタが先を歩いていたのだが、少し2人の距離があいてしまいお互いの姿が見えなくなっている内に、お互い別の沢を詰めていることに気付いた。 そもそも私は分岐していたことにも気付かずに登っていたので、マスタがどこで違うルートに入り込んだのかよく分からなかった。まだそんなに離れていたわけでもなかったので、私よりも左側の沢筋を歩いていたマスタが、私の居る沢の方へと藪漕ぎしてトラバースしてくることになった。
一旦引き返してからこちらへ渡ってくれば良いものを無理にトラバースするものだから途中のガレで少々転落したらしい。恐ろしい・・・。

とりあえずこちらのルートが正解だった模様で、更に上を目指す。
赤茶けた岩肌のところは、右の方へトラバースするように上がって草付きに取り付く。
岩は脆いので、岩肌をそのまま上がるのは難しそうだった。
灼熱地獄の北鎌沢をようやく詰め終わり、9:45にようやく北鎌のコルに乗る。
後頭部から照りつける日差しと白い岩からの照り返しでグッタリしながら到着したコルは、噂通りのウンコ臭。装着しているところを誰にも見られたくない、と思わずにはいられない、このオバハン仕様のサンシェード。
本日はこれにて封印。北鎌でこんなの付けてたら視界狭くて危ないので外す。
幕営可。結構広い。
尾根が始まる。いざ!
いきなり岩岩岩のナイフリッジでも始まるのかと思ってたら、最初は低山にもありそうなこんな道。
踏み跡も明瞭。
稜線にさえ上がればきっと風も吹いて涼しいだろうと期待していたのに、この木の多さ。
木に覆われて熱がこもり、沢筋の灼熱地獄とさして変わらない。。。いつまで続くのか・・・
と、幕営適地。誰かによって整地された適地が尾根上には多数ある。
雨は止めて欲しいけれども、もうあんまり晴れなくていいよ・・・
ガスってきた
先行パーティーが見え隠れ。近づいたり遠ざかったりを繰り返す。
一応ロープが付いているところもあり。しかしロープがあるからと言ってルートが合っているとも限らない。
ここは流石に合っていると思うが、これ以外にも多数あったロープやスリングの類は、先人達がそれぞれに
そこを突破しようとしてつけたものであって、決して簡単で安全なルートとは限らない(と思う)。
それぞれが、それぞれの力量に応じて、突破できる道を選びながら進むべき。正解は無い・・・
こうして見ると怖いけれども、歩くとそれほどでもなく。
ヤマケイのDVDで、ナッツで支点を作って確保していた場所(と思われる)。
足場は小さく、上の石もハングしているので一応確保しましょう・・・とのことだったが、
足場はかなり安定していて大きかったので確保せずに突破した。
足場は2段になっていて、上段に乗ると確かに怖いかもしれないが、下段に乗れば問題なし。
アホなポーズで楽しむ余裕もw
スリングを掴んで上へ攀じ登るが、私には不安な登攀だったのでトップロープで確保してもらう。
(ほんの3~4m程度の登り)登った後、多分本当は右に進むのだろうけれど、先行パーティーが
左を歩いていたのでつい左へ進んでしまう。
先行パーティーにつられてしまったところ。
スリングを使って攀じ登った場所からここに至るまでのトラバースが大分怖かった。
矢印が通っているザレの部分は、多分本来人が歩く場所ではない。
北鎌で個人的に一番怖かったのはココだ。
人が歩かないザレほど怖いものはなく、置いた足の下にあるザレがそのまま地滑りのようにしてごっそりと谷底に流れてゆき、それはまるで蟻地獄さながら。
歩かれている場所を歩けば、怖そうに見える場所も大して怖くないのだが、歩かれていない場所を歩いた時、その足元の不安定さに衝撃を受ける。北鎌の難しさはここにあるのだと思う。
今日中に槍に抜けないと、ツェルトしかないから夜寒い・・・と仰っていた先行パーティー。
結局辿りつけたのかは謎だが、自分達より歩くのが速かった訳でもなかったので、多分尾根上でビバークしたのだろう。
独標のピークから見る北鎌尾根が美しいと聞き、是非見てみたかったのだがガスのためピークは巻くことに。
都内某山道具店で北鎌のDVDを見ていた時、たまたま居合わせたスーツ姿のオジサマ方2人はその前の週に丁度北鎌に行かれていたらしいのだが、その方からも「是非独標は登りなさい」と言われていただけに、悔しい。
でも正直、もの凄く疲れていたから、登らなくて済んで少しホッとしたのも事実・・・
ガスが湿り気を増し、先行パーティーの姿がガスの中に見え隠れするようになった頃、丁度独標とP2873の中間あたりの左側に幕営地があるのを発見。
朝の時点では、北鎌平(穂先まで1時間のところ)で幕営かなぁと思っていたのだが、この速度で歩いていたのでは、とてもじゃないがそんなところまで進めないし、突然大雨が降ってくるとも限らない。諦めるには少し早いような気もしたが、次の幕営適地までどれくらい歩けば着くのかも分からなかったし、とりあえず今日のところはここで歩みを止めることに決めた。
文句なしの幕営ポイント(ちょっと狭かったけど)
写真では分かりづらいが、出入口ではない方は足場が殆ど無くてギリギリなので回りこみは難しい。
(ガイラインを張る程度の余裕はある)
テントを張っていると、後続のパーティーが「あぁ、先客がいた!」と残念そうに声を掛けてきた。
後で聞いた話だと、この3年で3回北鎌に来ているというプロのガイドさんとそのお客様という2人パーティーだった。こんな半端なポイントに狙いを定めているなんて流石プロ。
翌朝聞いた話によると、少し先のポイントに幕営したとのこと。

ご飯を食べて少しすると雨が降りだし、雨の中用を足しに行くのも面倒臭くなってそのままうとうとと眠る。2時間ほど眠ると雨は止み、夕日に照らされた雲で辺りが白っぽく輝いている。更に、今までちょっとも見えなかったお槍様の姿がドーン!

水墨画のよう
ガスがあがってきては消え、そして霞になったり、モクモクと穂先を覆ったり、のダイナミックな北鎌
そしてまた穂先が見えて
明日歩くルートが見えたところでおやすみなさい
独標から見れば更に美しかったであろう北鎌尾根。けれどここからの眺めも十分美しかった。東西南北に美しい尾根をのばすこの偉大なる槍ヶ岳という山は、美しく力強くそして神々しい。普通に登っている時には何とも思わなかったが、このルートで登ってみたらちょっと違って見えた。
北鎌から登ったら、まぁちょっと大袈裟かも知れないが、なんだか自分が槍ヶ岳になったような気分になれた。愛と厳しさを備え持つ強い山そのものになったような気分に。

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